コラムニスト

以前からちょくちょくここにも書いているが、
いまスポーツのコラムニストに興味がある。
無論、サッカー中心だけど、それ以外でも。
毎号買ってるNumberとか、Webページ、スポーツナビでは
良質のコラム、読み物が掲載されていて、
毎回、興味深く読んでいるんだけど、
正直書き手まで注目しだしたのは最近。

良質のコラムが多く、スポナビのサッカーコラムは見所があるんだけど、
なかでも、『パリ・サンジェルマンU−12コーチからの手紙(樋渡群)』は、
着目点が面白い。(これが書きたくて、今日の題材なのです)

多分、特集ものだから長く続くかは分からないコラムなのですが、現在5回目。
書き手はフランス在住。PSGのU−12コーチをしている方。

コラムの題材は、サッカー文化。なかでも「言葉」に着目している。
私が説明しても、言葉足らずになるだろうから、彼の分を引用する。
(問題あるかなあ?著作権とか問題だったらご指摘ください、消します。)


以下、引用文。
【第一回より】
「日本サッカーには、あまりにもサッカーを表現する言葉が少なくて、
それを無理に創り出そうとして、英語オンリーに傾いてしまっているような気がするのです。
『サッカー』をはじめ、コントロール、キック、シュート、パス……安易に英語だけで表現しようとすると、
言葉から動作への幅がなくなってしまう危険があるのではないでしょうか」

「フランスには『乾いたパス』という表現があります。
これは“ボールが蹴られた瞬間の音が乾いていて、なおかつ地をはう速いパス”のことを意味します。
このように、いろいろな国の言葉を集めて、そこから議論をはじめて、
日本に取り込めるモノとそうでないモノを分別していく作業が必要かなと思っています。
英語だけでなく、他文化の言葉も踏まえたうえで、サッカーにおける動作の意味を探り、消化していく作業を提案したい」

【第五回より】
私がここで試みているのは
「日本サッカー界のプレーに関する一挙手一投足に影響を与える言葉に伴う、
イメージの質と量のあり方を、異文化も参考にして考察してみること」である。
ある言葉を聞いて、連想して、行動に移す
(また、行動して試して、新たな連想をして言葉を作る)という過程、
その情報の蓄積量、質において、サッカー先進国とサッカー後進国では、歴然とした差があるのだ。
いくら見よう見まねでシステム(ここでは、サッカーにかかわるすべての環境を指す)を
いじくってみたところで、肝心の「感情に影響を与える言葉の意味」が理解できていなかったら、
長期的に期待する効果は出ないだろう、と予言しておく。

今、私が進めている作業は、日本サッカー界、
ひいては世界のサッカー界の未来に非常に価値のあることだと自負している。
だが、とても一人ではカバーできないし、それにフランス語だけを吟味しても面白くない。
サッカー先進国では、イタリア語、スペイン語ポルトガル語、ドイツ語、オランダ語などを、
そして後進国からはアラビア語、韓国語、中国語、タイ語などを検討してみたい。
その中から、日本語に置き直せるものは、日本語として定着させ、原語でしかイメージしにくいものは、そのまま残す。
あるいは、現代の状況に合わない言葉なら、採用しなければよい。
そのように取捨選択され、イメージされ、言葉になり、ある「動き」として体が表現する。
この作業を進めていけば、今まで見たこともない「動き」をする選手が現れるかもしれないし、
今まで以上にすばやい「動き」をする者も出てくるかもしれない。
読者の皆さんの協力が必要である。


ここまで、引用終わり。原文まま。


よく分からなかったかもしれませんが、
例えば、今回のコラムでは「duel」を取り上げていました。
単純に訳するならば1対1とでも訳されてしまうのだけど、
それは単純な数の問題ではなく、リスクを負ってチャンスに
チャレンジする勇気のある行動のことであると、
彼は分析している。(私の理解が正しければ、だが)
このように、ただ訳すだけではなく、そこにいたる感情とか、文化的背景を
考慮に入れて、『サッカー』(footballと書くべきだろうか?)に関連する言語を
考えようというのが、彼の試みです、多分。

じつは、『ことば』に関することがこのコラムで書かれたのは二回目で、
かつ、第三回に語られた、「La conservation du ballon」が間違った解釈だったとして、
後日、訂正されていたため、以降、言語についての考察を続けてくれるのか、
多少心配していたのだが、どうやら大丈夫そうである。
解釈が誤っていたとしても、その試み自体の意義は変わらないはず。

壮大な試みだよなあ、と思う。
なかなか気がつかない重要なことに、挑んでいる人がいるということを
純粋にすごいなと思うし、尊敬するし、応援したいと思い、
紹介してみました。



全部読みたくなった方は、こちらへどうぞ。
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/eusoccer/france/column/200503/at00004074.html


自分には、こんな真似はとてもできないが、
いろいろな角度から、好きなものを眺めてみるというのは、
面白い作業だ。
自分にはなにができるだろう。
そんなことを思ってみた。